景気動向

2009年9月 7日 (月)

NO, WE CAN’T

堀古英司氏のレポートから

NO, WE CAN’T

2007年に始まったアメリカの一連の不良債権問題に関し、明確にしておかなければならない事があります。それは第一に、2008年9月「リーマン・ショック」をきっかけに始まった大手金融機関が連鎖倒産し、金融システムが麻痺してしまうような状況は今年春をもって既に遠のいた事、第二に、一方で不良債権問題は解決していないという事です。大まかに言えば、アメリカ財務・金融当局は、前者に対しては問題先送り措置を取り、後者に対しては多くの負担を国家に転嫁する措置を取りました。ですので今後不良債権問題に伴って発生する損失は、一部が金融機関、残る多くの部分が政府の負担になります。この結果、来年以降アメリカが経験するであろう危機は、リーマン・ショックとは性質が異なるものになると考えられます。

アメリカ財務・金融当局が一番初めに取った問題先送り措置はリーマン破綻3日後の空売り規制でした(第228回 米財務・金融当局が「麻薬」に手を出した理由(2008年9月22日))。もちろんリーマン・ブラザーズが破綻したのは空売りが原因ではありません。リーマンが不良債権を抱えていたのが原因であり、それに耐えられる資本を蓄えていなかったのが原因です。しかし当局は不良債権や資本不足の問題に着手する代わりに、金融機関の空売りを規制するという愚策に出てしまったのです。

時価会計ルールの緩和も問題の先送りに過ぎません。銀行がお金を貸して、金利は毎月受け取り、将来見込まれる貸倒損失は計上しなくて良いのであれば、「今は」儲かるに決まっています。保険会社が保険料だけ受け取り、将来見込まれる保険金支払に備えていないようなものですから、問題が先送りされているだけなのは明らかです。

ストレス・テストは市場心理を大幅に改善させる効果はありましたが、今回の不良債権問題が大手行750億ドルの資本増強で済むと信じている人は殆どいないと思います。 実際我々の分析では、同じ債権でも額面100に対して市場価値に近い50近くまで落としている銀行と、まだ80-90のままバランスシートに載せている銀行と様々です。そもそも個別債権の評価が30-40%違う銀行業界で、有形普通株自己資本が4%で健全と判断するストレステストを、不良債権問題の解決のきっかけとするには無理があるのです。

これら先送りされた問題は銀行に残ってしまっています。しかし、政府が大手19行は潰さないという強い意志を示しているので、リーマン・ショックのように、それによって金融システムが脅かされる状況になる可能性は低いでしょう。一方で毎週FDIC(連邦預金保険公社)が発表している中小銀行の破綻は今後も増加していく事になると思います。

リーマン・ショックに代わって今後大きな問題になると考えられるのは、現在政府が実施している様々な「保証」です。昨年10月に議会承認された70兆円のTARP(不良資産買取プログラム)資金は今年3月時点で残り5兆円と、ほぼ枯渇するに至りました(株式相場が安値を付けたのも、TARP枯渇に対する懸念が一つの要因でした)。困り果てた当局が積極的に利用し始めたのが、すぐに負担が発生しない様々な「保証」です。今年6月時点で、様々なプログラム名の下、連銀で約620兆円、FDIC関連で約170兆円、政府系住宅金融関連で約75兆円の保証が実施されています(連銀であろうと、FDICであろうと、政府系住宅金融であろうと、最終的に国民負担である事に変わりはありません)。

これらはいずれも、すぐに負担は発生しないものの、住宅市場や雇用情勢が回復しなければ同時に損失が発生し始め、しかもその負担は巨額なものに上るというリスクを内包しています。果たしてアメリカ政府の財務体質はこのようなリスクに耐えられるのでしょうか。答えはもちろんNO, WE CAN’Tです。

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2009年9月 6日 (日)

いい加減な運用でも案外大丈夫?

こんばんは。ひさびさの更新です。

さて、本邦では衆院選、ちょっとした政権交代が起ったが、経済へはどのように影響するだろうか?

恐らく 新しい政治への期待より、「どこまでできるのか?」の不安、不透明感が大きく、下げ相場になるだろう。

世界経済全体への影響は小さい。

ダイヤモンドオンラインから

いい加減な運用でも案外大丈夫な理由

公的部門の支援で回復の景気 株式市場に再度動揺のリスク

再任のバーナンキFRB議長
ウォール街賞賛も議会には不満

「銀行業界はFRBにとって最も重要な選挙区である」。FRBの内幕を描いた『神殿の秘密』(1987年刊)で、著者のW・グレイダーはそう述べている。ウォール街から支持を得られなければ、事実上、FRBは仕事を進められないことを彼は指摘していた。

 8月25日にオバマ大統領は来年1月に任期が終わるベン・バーナンキFRB議長の再任を発表した。ウォール街からの彼に対する非常に高い信任は、オバマの判断に大きな影響を与えた様子である。

 リーマン・ブラザーズの破綻で崩壊に瀕した金融市場に対し、バーナンキ率いるFRBは次々と新しい資金供給策を創出して、パニックの拡大を阻止した。それらの市場救済策は、場合によってはFRBに損失を生じさせ、納税者負担につながるリスクもあった。

 FRBが捨て身の救済策を発動したことは、当然ながらウォール街からは賞賛されている。

 上院はバーナンキの議長再任を賛成多数で承認する見通しだ。だが、影響力を持つ民主党のドッド議員は、「たぶん正しい選択なのだろう」と微妙な発言を行なっている。

 多くの議員は、バーナンキの果敢な対応のおかげで米国経済が大恐慌を回避できたと評価しつつ、議会のコントロールを超えて、FRBが納税者負担を生みかねない巨額の資金供給を実施したことに不満も感じている。

・・・

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2009年7月19日 (日)

こんばんは。

こんばんは。

今、「NHKスペシャル “マネー資本主義”」 放映されてますね。

面白そうだよ。

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2009年7月12日 (日)

金融危機「震源は欧州」だった?! 

金融危機「震源は欧州」だった?! 

世界の資金の流れに焦点を当てると、金融危機の「震源」は欧州の銀行だった、とするリポートを日本銀行がまとめた。サブプライム問題を生み出したのは米国だが、資金が欧州の銀行を経由し過ぎていたため危機が一気に世界に拡大した、と分析する。

 金融市場局が国際決済銀行の統計を用い、世界の金融ネットワークを分析した。英国、スイス、ユーロ圏内の欧州3地域の銀行部門は02年以降、産油国や新興国との取引を拡大。米国や日本の銀行部門を押しのけ、世界の資金が集まる最大級の「ハブ」(中継地)に成長した。

 ハブでショックが起きた場合、資金のネットワーク全体に瞬時に広がるおそれがあるという。サブプライム問題を契機に途上国が資金を引き揚げ始めると、欧州の銀行間でドル資金の取引が凍りつき、金利は急上昇した。ユーロ圏と英国の銀行が緊密に資金をやりとりしていたため、「ショックが両地域間でピンポンラリーのように増幅し、影響は世界各地に広がった」という。

 日米欧の中央銀行が昨年秋から金融機関にドルを無制限に供給する異例の措置を取ったことで、世界の金融市場は落ち着きを取り戻しつつある。リポートは「(日米欧の)ハブに集中的に資金を供給する体制であり、効果的だった」と評価している。

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欧米の新聞は、既に死んでいる 元新聞記者が愛惜を込めて直視した業界の終焉

激動の渦中にある産業にとって何よりも恐ろしいのは、時代の変化の速さだ。このビジネスは安定していて、これからも多くの利益を上げ続けると思っているうちに、ほんの数年後には、そのビジネスモデルは崩壊してしまっていたということはあり得るのだ。

 新技術の分野においては、変化のスピードはさらに速い。消費者の行動の変化はこれまでになく速くなり、かつて力を持っていた産業が、今や息も絶え絶えとなっている。その最たるものが新聞業界である。

「ほとんどの新聞社は投資に値しない」と言ったバフェット氏

 新聞業界が厳しい状況であることは、米国と欧州では10年以上も前から明らかだった。そしてついに2008年、この業界は変化の波に押し流されてしまった。米国ではデンバーからサンフランシスコ、そしてシアトルなど、かつては各地で読まれていた地方新聞が廃刊となった。米「ニューヨーク・タイムズ」紙は日々の支払いに必要な金策のために、法外な利子でカネを借り、マンハッタンにある本社を抵当に入れなくてはならなくなった。

 欧州では英「イブニング・スタンダード」が負債引き受けを条件として、ロシアの億万長者にたったの1ポンドで売られた。フランスの「ルモンド」紙と「リベラシオン」紙の状況もひどく、欧州大陸内はどこも同じような状況だ。

 米国と欧州、大西洋どちらの側の記者に聞いても、出てくるのは終わりなき予算カット、リストラ、収益の減少といった暗い話ばかりである。強い酒でも飲まなきゃやっていられない、というのが本音だろう。

 世界第2位の富豪で米国人投資家であるウォーレン・バフェット氏は今春、新聞業界への投資を断念すると発言した。「いかなる価値であっても、ほとんどの新聞社は投資に値しない」と年次株主総会で彼は語った。「新聞各社は今後も損失を出し続ける可能性がある」とも言っている。

 ビジネスでも新聞業界にかかわり、業界への思い入れの強いバフェット氏だけに、この発言は非常に大きな意味を持つ。子供の頃、彼が最初に携わった仕事は新聞配達だった。そして、長い間「ワシントン・ポスト」紙や「バッファロー・ ニュース」紙の株主でもあった。「問題は、読者にとっても広告主にとっても、もはや新聞は必要不可欠なものではなくなっていることだ」と彼は言う。ニュースは今やインターネット上など至る所で、いくらでも手に入れることができる。要するに「新聞」というビジネスモデルは既に崩壊してしまったということだ。

 ホテルチェーンのマリオットは今年4月、米国内のマリオットホテルにおいて、宿泊客への新聞無料配布を原則、やめると発表した。これだけで全米の新聞の売り上げは5万部減少した。マリオットは新聞配布の中止によって、森林伐採を防ぎ、環境保護に貢献できると主張している。気候変動さえも新聞“消滅”の一翼を担っているのだ。

既に「収穫期」ビジネスとなっている

 海外で生じているこういった問題を聞いても、日本では対岸の火事と思われるだけかもしれない。日本の新聞はまだまだ元気で、世界でも最高の購読数を誇り、高齢化してはいるけれども、安定した読者を抱えている。過去10年間、米国での新聞購読数が15%も落ちているのに対し、日本での下落率は3.2%にとどまっている。

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2009年5月20日 (水)

なぜ査定結果に納得できないのか?「ストレステスト懐疑論」の理由と本質

ダイヤモンドオンラインから

なぜ査定結果に納得できないのか?「ストレステスト懐疑論」の理由と本質

5月8日、FRB(連邦準備理事会)は、ようやく米国主要金融機関19行のストレステスト(資産査定)の結果を公表した。

 ストレステストとは、金融機関を取り巻く経済環境が予想以上に「悪化=ストレスが発生」した場合、「金融機関が保有する資産からどれだけの損失が発生するか」を計測するテストだ。

 何故今、ストレステストを行なうかといえば、サブプライム問題に端を発した経済状況の悪化によって、「米国の大手金融機関がどれほど体力を低下させているか」を調べるためだ。

 実際には、150人に上る金融のプロが、約2ヵ月かけてそれぞれの銀行の資産内容をすべて克明に調査する。

 テストの結果、対象となった19行のうち9行が合格。つまり、「現在の財務内容ままでも、経済の一段の悪化にも耐えられる体力がある」と認められた。

 一方、残りの10行については、今のままで体力が十分ではない可能性があり、今後資本金を積み増して体力を強化することが求められた。

 この結果は、ほぼ事前の予想通りで、多くの関係者は「テストの結果を見て安心した」と胸を撫で下ろした。資本増強を求められた10行の金融機関についても、「実現可能性の高い資本増強さえ行なえば、今後の業務遂行に支障はない」という一種のお墨付きを、金融当局が与えたからだ。

 それは、結果発表に気をもんでいた多くの市場関係者を安堵させたことは間違いない。それをきっかけにして、株式市場で一時的に金融株が買い戻され、市場全体が堅調な展開を示したことを見ても、明らかだ。

 しかし一方で、その結果に懐疑的な見方が根強くあることも見逃せない。一部の金融専門家からは、「今回のテストの前提となるシナリオが甘すぎる」などの批判が出ている。

 また、「今回のテスト結果は、元々政策当局が市場を安心させるために、“結果ありき”の逆算方式で出したのではないか」などの見方も出ている。

 つまり、今回の結果だけを見て、「これで米国の銀行は大丈夫だ」と結論づけることは、時期尚早だろう。今後の展開を注意深く見守ることが、必要になる。今回は、結果公表時から噴出している「ストレステスト懐疑論」の理由と本質について、考えてみよう。

--- 中略 ---

“結果ありき”のテスト結果が
残した「割り切れない不安」

 今回、資本増強を要請された銀行は、「勘定上、すでに注入されている公的資金の優先株式を普通株式に転換することによって、資本増強が行なわれた」と判断されることになっている。

 これは単純に考えると、“不合格”になった銀行は、政府に頼んで優先株式を普通株式名義に変えるだけでことが済むことになる。むろん、それによって当該銀行は、政府の株式持ち分が増加するため、当局からの干渉をより多く受けるデメリットが生じる。

 しかしそれさえ我慢すれば、政府から“安心”のお墨付きを受けることができるわけだ。

 また、優先株式から普通株式に転換することによって、「優先株式の高い配当負担を軽減できる」というメリットも享受できる。それは、収益情況の苦しい銀行にとって、大きな“福音”になることは間違いない。

 こうして見てくると、厳正に行なわれるべきストレステストの実施について、FRBや政府の政策意図が感じられる部分は、やはりどうしても少なくない。それが、関係者から「“結果ありき”のストレステスト」と揶揄される一因になっている。

 問題は、政策当局の意図によって、本当にテスト結果に何らかの“化粧”が施されているとすれば、いずれかの時点でその化粧が剥げ落ちる可能性が高いことだ。それが現実味を帯びてくるようだと、米国、さらには世界の金融市場にマイナスの影響を及ぼすことだろう。

 われわれはそのリスクを、常に頭のどこかに入れて置いた方がよさそうだ。

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2009年5月12日 (火)

ストレステスト結果の受け止め方

こんばんは。仕事が非常に忙しくて、なかなかブログ更新できず、すみません。

さて、マーケット、ようやく雲の隙間から明るい兆しが見え始めた?

もっとも短期的には利益確定にはひとつの良いタイミングかな。

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堀古氏のレポートから

ストレステスト結果の受け止め方

昨日、待ちに待ったストレステストの結果が発表されました。ストレステストの行方を巡って市場が揺れに揺れたこの3ヶ月間でした。ストレステストの実施が明らかになったのが2月初、そもそもガイトナー米財務長官が「銀行救済策」を発表するはずだった記者会見で発表し、寧ろ金融危機に対する市場の懸念を増幅する結果となりました。その後AIG、シティグループが次々と実質国有化、ストレステストの結果によっては更なる国有化に繋がるとの懸念から3月初に米国株式は安値を付けるに至ったのでした。

そもそもこのストレステストが実施された理由を思い出してみましょう。不良債権問題解決に必要な、(1)不良債権の価額を把握、(2)それに伴って発生する金融機関の資本不足を補う、(3)金融機関の新規貸出し増加、というステップのうち、(1)に過ぎません。従ってストレステストの結果をもって、アメリカの不良債権問題が解決する、と期待するのはそもそも見当違いなのです。ただ、(1)に過ぎないとはいえ、これによって昨年9月のリーマン・ショック以降市場が抱いていた余計なリスク、カウンターパーティ(取引相手)リスクが大きく後退するという成果はあったと思います。

リーマンが破綻した当日にテレビ東京の番組に出演させていただいた私は、「今後発生すると見られる大手金融機関の連鎖倒産、またそれによって金融システムが麻痺する可能性は大きなリスクだ」とコメントしました。実際直後にAIGが実質破綻、メリルリンチ、ゴールドマンサックス、モルガンスタンレーが次々と破綻のリスクに直面する異常事態となりました。そしてそのリスクはこの3月まで後退する事はありませんでした。今回ストレステストによって、初めてこのカウンターパーティ・リスクが大きく後退したのは成果だと言えます。即ち、個別金融機関ベースでは今後資本増強や資産売却など課題は多いものの、だからといってそれが金融システム全体を揺るがす事態となる可能性は当面無くなったと見て良いでしょう。市場の不安心理を表す変動率指数は本日時点で31にまで低下していますが、これはリーマンが破綻した日と同じ水準です。このようにカウンターパーティ・リスクが大きく後退した事は数字のうえでも明らかに見てとれます。

一方で、アメリカの抱える不良債権問題の解決はこれからです。そもそも今回のストレステストには2つの大きな問題があります。第一に、「ストレスのかかった」の経済状況の見通しです。例えば2009年GDP-3.3%、失業率8.9%、住宅価格-22%という「ストレスのかかった」前提に対し、実際は2009年第1四半期GDP-6.1%、4月失業率8.9%、住宅価格下落率の20%超もほぼ確実な情勢です。現在の経済状況が既に「ストレスのかかった」前提に近くなってしまっており、経済に更なるストレスがかかった場合に負のスパイラルに陥ってしまう可能性は否定できません。

第二に、今回当局は「有形普通株自己資本比率」の4%をストレステストの基準としていた事が明らかになりました。4%というのは、殆どの金融機関がいざとなれば既存の優先株を普通株に転換すれば達成できる基準です。しかしそもそも、今後も不良債権の増加が確実視される中、4%で足りるのかという問題は残ります。またメガバンクの総資産が軒並み200兆円近くに上る中、この基準が1%上がるだけで兆円単位の資本不足が生じる事になります。別の見方をすれば、今回当局が基準を(5%ではなく)4%に設定してくれたのはラッキーだったとも言える訳です。

このように、今回のストレステストはカウンターパーティ・リスクという大きなリスクを軽減させる事に成功したものの、中長期的な不良債権問題を解決したものではない、という認識が大切だと思いますただ市場に目を転じてみると、リーマン破綻当日と今日を比べると、変動率指数が同じである一方、リーマン破綻当日のダウ終値が11,000ドルであったのに対して今日は8,400ドル台です。全て回復するのは困難にしても、当面カウンターパーティ・リスクの後退を楽しめる余地はかなり残っているのではないかと考えています。

(2009年5月8日記)

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少し日がたってますが、中原圭介氏のコラムから

今年と来年の大雑把な株価予想

日経平均株価は昨年10月安値と今年3月安値である7000円でダブルボトムを形成しました。そのことにより、世界的な景気後退の底打ちは確認できていないものの、日経平均株価の下降トレンドは当面の底を打った可能性が出てきたことを、3/30の記事では書きました。

一方で、昨年11月高値の9500円、今年1月高値の9300円が強力な上値抵抗ラインとして意識されています。たとえ好材料が重なり、9500円を一時オーバーシュートすることがあったとしても、高値は10000円が精一杯になるのではと見ています。

よって、日経平均株価は高値のレンジが9000円~10000円、安値のレンジが7000円~8000円のボックス圏相場に突入した可能性が高まっています。

世界的な景気対策の効果が切れる兆候が見られるまでに、アメリカの住宅価格の下落が止まるのか止まらないのか、金融機関が不良資産をバランスシートから切り離すことが進むのか進まないのか、これらの結果によって、来年以降の株価の予想は全く変わってきます。

短期的には株価と景気はぴったりと一致するわけではありませんが、長期的には一致する傾向があります。

悪いシナリオとしてアメリカの住宅価格の下落が続き、ストレステストの資産査定の結果を甘めにしてしまったとしたら、金融機関は不良資産をバランスシートから切り離すことをせずに、金融の正常化は程遠いものとなってしまいます。その場合は来年以降の株価は当面の安値7000円を下回ってくることも考えられます。

逆に良いシナリオとしてアメリカの住宅価格の下落が止まり、金融機関のバランスシートの健全化が進めば、ボックス圏相場を維持するか、本格的な上昇相場に転じる可能性が残されています。

4月上旬に、政府の関係機関が最大50兆円の株式等を市場から買う「危機対応措置」を設け、リーマンショック以来の株価急落のような異常時に限り買い出動することを示唆しました。ですので、7000円はかなり強い下値抵抗ラインとして考えることもできます。

しかし歴史上、政府の株価対策が効果を発揮したという記憶が、私にはありません。仮に悪いシナリオになった時に、この措置の規模は十分な額に思われますが、成功するか否かは未知数な政策です。

アメリカでは、金融機関の不良資産買取策の実効性がまだ判断できるほど運用面の具体的な方法が明確になっていませんし、GMの救済問題の結果がどうなるのかも見えていません。一寸先は闇の難しい相場が続きそうです。
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2009年4月25日 (土)

米金融「好決算」の真相

堀古氏のレポートです。

米金融「好決算」の真相

1-3月期の米金融機関の決算は、あたかも金融危機が終わったかのような好決算が相次いでいます。好決算なので早く発表したくて仕方ないのでしょう。通常、企業が株価を上げたい時に使う「繰上げ決算発表」のオンパレードとなっています。しかしニュースの一行目で報じられる「好決算」とは裏腹に、実は中身をよく見てみると悲しくなってしまうような内容が並んでいるのです。

好決算の火付け役となったのは大手銀行ウェルズファーゴでした。予定されている決算発表は4月22日だったのですが、待てなかったのでしょう。4月9日に速報値を発表してきました。
-収入は200億ドル、合併前のウェルズファーゴから2桁増収!貸倒償却は61億ドルから33億ドルに減少!
ご存知の通り、現在のウェルズファーゴは実質破綻となったワコビア銀行と合併した銀行です。一年前のウェルズファーゴの収入は137億ドル、ワコビアは130億ドル、合計265億ドルですので、実際は増収ではなく減収なのです。しかも現在の経済環境では貸倒償却の減少は一時的な色彩が極めて強いと言えます。

次はゴールドマンサックスでした。ニュースの一行目は以下の通りです。
-純利益18億ドル、一株利益3.39ドル、2008年2月29日期の3.23ドルを上回る!
ゴールドマンは銀行持ち株会社への移行に伴い、これまでの12-2月期から1-3月期に決算期を変更して初めての決算発表でした。1-3月期に18億ドルの利益が出た事は一行目で発表されましたが、今回の決算期から外れた去年の12月、1ヶ月間で10億ドルの損失を出していた事に関する記載は発表資料の下の方でした。決算を繰り上げて発表し、しかもその日に50億ドルの増資をしなければならないという重要な日だった訳ですから、12月の損失も一行目で開示するのが誠実な姿だったのではないかと思います。

そしてメガバンクです。今月初に発表された時価会計ルールの緩和の影響がどれだけ出てくるか、市場が戦々恐々と見守る中、JPモルガンもシティグループも、時価会計ルール緩和によるメリットは殆ど受けていない、との発表でした。それもそのはず、実は両行とも時価会計ルールが緩和される前のメリットを受けていたのです。これはFASB157と呼ばれ、従来の資産だけではなく、負債も時価で評価する、というルールです。3月初めまでは金融危機は深刻化する一方でしたから、メガバンクの負債の評価はかなり下がっていたのです。資産の評価が下がると損失が出るのと逆で、負債の評価は下がると利益が出るのです。直感的に変だと感じられると思いますが、メガバンクは今回、正にその変な利益をかなり計上しているのです。好決算はこの変な利益が寄与した結果とも言えます。

バンクオブアメリカの決算は中国建設銀行株の売却に伴う一時的な利益が大きく貢献していたにも拘わらず、ルイスCEOは「会社自体の強さだ」と強調しました。これが逆に不誠実な印象を与え、株価は一日で24%の急落となりました。これに加え、特に1-3月期は巨額の公的資金注入を受けたAIGが大規模なクレジット・デフォルト・スワップの手仕舞いを行いました。自ずから取引相手の言い値での手仕舞いになったため、取引相手の大手金融機関に大きな利益(公的資金)が転がり込んだ可能性が高いと見られます。

出来るだけ財務内容を良く見せ、資本増強を有利に進めなければならない状況である事は分かります。しかし今の米金融機関は勉強する事よりも、成績表を良く見せる事に力を入れすぎているように見えます。それが行き過ぎて市場に「誠実でない」という印象を与えてしまうと、逆効果になる事が忘れられているような気がします。

(2009年4月21日記)

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2009年4月 2日 (木)

今回の反騰相場は「いつか見た光景」となるのか?

中原圭介氏のコラムから

今回の反騰相場は「いつか見た光景」となるのか?

先週までのNYダウ平均株価は3週連続で上昇し、今月に付けた最安値から約19%上昇して終わっています。3週連続の上昇は2008年5月以来のことです。アメリカ政府の景気対策に加え、FRBの資産担保証券への資金供給策、財務省の不良資産買取策と、矢継ぎ早にできる限りの政策が総動員された結果、市場の期待が膨れ上がり、景気底入れを見込んだ株価反騰となっています。

しかし、私は景気が底入れしたと判断するには早計だと思っています。

FRBの資産担保証券への資金供給策は、本来ならばそれなりの効果が期待できますが、現在は商業用不動産価格の下落幅が拡大傾向にある途中です。せっかく住宅価格の下落幅は縮小してきているのに、商業用不動産のローン延滞率はリーマンショック以来、直近の2月まで上昇基調にあります。商業用不動産価格の下落とともに、金融機関が保有する関連証券化商品の損失額が急拡大していることは間違いありません。FRBの負担がどこまで増えるのか、非常に不透明な状況です。

金融機関の不良資産買取策にしても、最大の焦点である不良資産の価格がどのように評価されるのかは、まだ何も決まっていません。おまけに、金融機関は不良資産を処理することにより確実に損失が膨らむため、簡単にはこの買取策の活用に踏み切ることができないでしょう。追加損失が膨らめば、資本注入に必要な金額も増えますし、政府の公的関与の度合いが強まります。制度の欠陥を補う妙案が出て来ない限り、金融機関の立場からはとても安心できるスキームではありません。

その上、買取枠が96兆円で本当に足りるのかという疑問もあります。以前、バッドバンク構想が一回立ち消えになりましたが、その原因は不良資産の処理には約400兆円が必要であるという試算が出たためです。そんなお金はとても捻出できないと、バッドバンク構想は頓挫していたのです。それを、新たに96兆円でやると言われても、その資金枠ではとても足りないと思われます。住宅市場や商業用不動産市場が回復しない限りは、やはり少なくてもあと数百兆円は必要であると考えられます。

私がこのブログでリスク資産のオールキャッシュ化を唱えて以来、アメリカの株価に連動して日経平均株価が予想以上に反騰する局面は2回ありました。昨年の4月~6月と10月~11月の2回の反騰相場です。ただし、今回の反騰相場と昨年の2回の反騰相場との違いは、明確にしておく必要があります。日経平均株価で見ると、昨年10月~11月の反騰相場前の安値と今年3月の安値がダブルボトムを形成したことで、景気後退の底打ちは確認できていないものの、相場のトレンドは底を打った可能性が出てきたということです。

もちろん、拙書「サブプライム後の新資産運用」でも書いているとおり、景気後退が続いている途中でのトレンド転換は当てにはなりませんが、昨年4月~5月のトレンド転換時の株価水準から一時は半値近くまで落ちているので、以前のトレンド転換よりは信用性が増していると言えます。

しかしながら景気後退下では、「期待で買われ、現実で売られる相場」が何度となく繰り返される傾向があります。2008年6月7日の記事で述べたように、「いつか見た光景」が再現される可能性は捨て切れません。

このように判断が難しい局面では、どちらに転んでも大丈夫なように、ニュートラルな思考に切り替えることが求められます。

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2009年4月 1日 (水)

官民投資プログラムの効果は?(2)

堀古氏のコラムから

官民投資プログラムの効果は?(2)

最近、アメリカでは金融危機への対応策として様々な策が発表されます。それもスピードがかなり早いので、日本にいらっしゃる方はなかなかついていけないのではないかと思います。ですので今一度、現在どの位置にいるのかを確認しておきたいと思います。

不良債権問題の解決に必要なのは大きく、(1)不良債権の価額を把握する事、(2)それに伴って発生する金融機関の資本不足を補う事、(3)金融機関の新規貸出し増加、です。アメリカは昨年後半にかけて不良債権問題の解決を急ぐあまり、(1)が中途半端なままに(2)に進んでしまいました。2-3月の株式相場急落はその反動が出たと言ってよいでしょう。そして先月、大手金融機関に対して、再び(1)をしっかりやろうという事になりました。これがガイトナー財務長官の発表した「ストレステスト」です。4月末までに完了する事になっています。

これとは別に、(2)から(3)への動きを進めようとするのが、今回発表された官民投資プログラム(PPIP)です。即ち、PPIPによってある程度資本不足が緩和されると同時に不良債権が切り離されるので、金融機関は新規貸し出しを進める事ができる、という訳です。しかし前号最後で申し上げたように、PPIPは一つの問題を解決しようとするために、将来他の大きな問題を孕んでしまった可能性が高いと考えています。

まず最近、金融危機対策を実施する主体として財務省とか連銀とかFDICとか、政府系の様々な主体が出てきます。難しく考える必要はありません。本質を掴むには全て「政府」と考えるのが一番です。(例えば「連銀が長期国債を購入」というニュースが出たとします。国債を発行するのは財務省ですが、財務省も連銀も「政府」と考えると国債はプラスマイナスゼロですので、結局このニュースは「連銀が紙幣を印刷してばら撒いた」と同じである事が分かります。)この考え方で今一度、このプログラムをご覧になってみて下さい。

1. 銀行が額面100億円の不良債権をオークションにかける
2. 民間のファンドが入札、仮に84億円で落札したとする
3. a. 落札金額の14分の1(6億円)を民間のファンドが出資
  b. 14分の1(6億円)を財務省が金融安定化資金から出資
  c. 7分の6(72億円)をFDIC(預金保険公社)がノンリコース融資(※)

財務省もFDICも政府です。なので84億円のうち78億円は政府がお金を出している事になります。しかも72億円はノンリコース融資なので、不良債権が値下がりして民間のファンドが返済不能になった場合、その値下がりに伴う損失は政府の負担です。即ち「官民投資プログラム」とは名ばかりで、14分の13のお金とリスクの負担をしているのは政府なのです。ちなみに最大1兆ドル規模のPPIPに対し、数多くの銀行破たんの結果FDICにはもう190億ドルしかお金が残っていないというのはご存知でしょうか?

そう言えば昨年8月、証券会社メリルリンチが「CDO(債務担保証券)を7200億円でファンドに売却」というニュースが出ましたが、実はメリルリンチは同時に、ファンドに対して5400億円のノンリコース融資を実施していたのを思い出します。5ヵ月後の今年1月、メリルリンチが巨額損失計上を発表したのはご存知の通りです。

今回例えて言えば、政府は保険を売ってその保険料を金融機関にプレゼントし、残った保険金支払のリスクだけ背負う状態になります。もちろん今後、不良債権の価値が上昇してくれれば問題はありません。しかし将来、丁半博打に負けて不良債権が値下がりする事になれば、金融安定化資金は簡単に枯渇してしまいます。その時政府は市場に、まだピストルの弾が残っているように見せかける事はできるのでしょうか?

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2009年3月26日 (木)

官民投資プログラムの効果は?

堀古氏のコラムから

官民投資プログラムの効果は?(1)

本日、市場が待ちに待ったいわゆる「バッドバンク構想」である官民投資プログラム(PPIP: Public-Private Investment Program)の詳細が米財務省から発表されました。これが好感され、NYダウは500ドル近くの上昇となりました。2月初め、「バッドバンク構想の発表間近」と期待させられた挙句、結局何も具体化していなかったと判明して株価が急落する場面がありましたが、ちょうどその水準を回復するに至りました。

米財務省のウェブサイトにも掲載されていますが、PPIPは以下のような仕組みです。
1. 銀行が額面100億円の不良債権をオークションにかける
2. 民間のファンドが入札、仮に84億円で落札したとする
3. a. 落札金額の14分の1(6億円)を民間のファンドが出資
  b. 14分の1(6億円)を政府が不良資産救済プログラム (TARP) から出資
  c. 7分の6(72億円)をFDIC(預金保険公社)がノンリコース融資(※)
※ノンリコースとは、仮に不良債権の価値が下落し、民間のファンドが融資を返済できなくなった場合、民間のファンドは不良債権を放棄する事によって返済義務を免れられる

一見かなり複雑な仕組みのように見えるのは、昨年来、バッドバンク構想に伴う様々な問題をクリアしなければならなかったからです。第一に、不良債権をオークションにかける事によって、価格の不透明性の問題をクリアしています。第二に、不良債権価額の14分の1という小さな割合でも民間のファンドに出資させる事によって、当該民間ファンドにインセンティブを持って不良債権をマネージさせる事ができます。これによって「小さな政府」のアメリカが専用の人材を用意する必要がなくなっています。第三に、政府の出資は不良債権額の14分の1で済みますので、残り60兆円ほどしか残っていない金融安定化資金をそれほど費やす必要はありません。第四に、前号でもご説明したように米財務省が信頼を失いつつある中、政府が民間ファンドと同額を出資する事によって、PPIPへの信頼が補完されています。第五に、これが最も重要なポイントなのですが、FDICがノンリコース融資を行う事によって不良債権への入札価格が上昇する事から、銀行の資本不足緩和に寄与すると共に、不良債権の売却を促しやすくなっています。

民間のファンドが投資するのは、上記の例で言えば次のような金融商品です。オークションで落札した不良債権が15%以上値下がりすれば6億円失う代わりに、値上がり益は理論的には無限大です。損失は限定的で、利益は無限大、即ちコールオプション(原資産を一定価格で購入する権利)のような性質を持っています。自ずから本来、当該不良債権が持つ価値よりも高い価格が付くはずです。但しこの、本来当該不良債権が持つ価値と、落札される価格の差は民間ファンドが受けるメリットではありません。民間ファンドは既にこのような金融商品である事を分かったうえで、競争入札によって公正な価格で落札しているはずだからです。それではこのメリットを受けるのは誰なのでしょうか?それは不良資産を売却する銀行に他なりません。

即ち、政府は単純に資本注入するのではなく、FDICによるノンリコース融資によってリスク負担の銀行から政府への移転、という形で公的資金注入しているのです。従って、このPPIPはスキームが複雑に見えますが、実は政府による変則型の公的資金注入に他ならないのです!AIG幹部のボーナス問題等でもお分かりの通り、一般の米国市民によるウォール街への怒りは頂点に達しています。そのような中、何とか一般の米国市民には分かりにくい形で銀行に資本注入する方法はないか、そのような観点から考え出された妙案のように見えます。

今日発表されたPPIPは、様々な制約がある中、上手くそれらの制約をクリアし、実際市場にも好意を持って受け止められています。しかし、残念乍ら万能薬というのは存在しないのです。今はひとえに、市場がこのプログラムが内包する大きなリスクに気付かないまま(又は目をつぶって)、金融危機の峠を越してしまう事を望むばかりです。。。

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