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2009年4月

2009年4月25日 (土)

米金融「好決算」の真相

堀古氏のレポートです。

米金融「好決算」の真相

1-3月期の米金融機関の決算は、あたかも金融危機が終わったかのような好決算が相次いでいます。好決算なので早く発表したくて仕方ないのでしょう。通常、企業が株価を上げたい時に使う「繰上げ決算発表」のオンパレードとなっています。しかしニュースの一行目で報じられる「好決算」とは裏腹に、実は中身をよく見てみると悲しくなってしまうような内容が並んでいるのです。

好決算の火付け役となったのは大手銀行ウェルズファーゴでした。予定されている決算発表は4月22日だったのですが、待てなかったのでしょう。4月9日に速報値を発表してきました。
-収入は200億ドル、合併前のウェルズファーゴから2桁増収!貸倒償却は61億ドルから33億ドルに減少!
ご存知の通り、現在のウェルズファーゴは実質破綻となったワコビア銀行と合併した銀行です。一年前のウェルズファーゴの収入は137億ドル、ワコビアは130億ドル、合計265億ドルですので、実際は増収ではなく減収なのです。しかも現在の経済環境では貸倒償却の減少は一時的な色彩が極めて強いと言えます。

次はゴールドマンサックスでした。ニュースの一行目は以下の通りです。
-純利益18億ドル、一株利益3.39ドル、2008年2月29日期の3.23ドルを上回る!
ゴールドマンは銀行持ち株会社への移行に伴い、これまでの12-2月期から1-3月期に決算期を変更して初めての決算発表でした。1-3月期に18億ドルの利益が出た事は一行目で発表されましたが、今回の決算期から外れた去年の12月、1ヶ月間で10億ドルの損失を出していた事に関する記載は発表資料の下の方でした。決算を繰り上げて発表し、しかもその日に50億ドルの増資をしなければならないという重要な日だった訳ですから、12月の損失も一行目で開示するのが誠実な姿だったのではないかと思います。

そしてメガバンクです。今月初に発表された時価会計ルールの緩和の影響がどれだけ出てくるか、市場が戦々恐々と見守る中、JPモルガンもシティグループも、時価会計ルール緩和によるメリットは殆ど受けていない、との発表でした。それもそのはず、実は両行とも時価会計ルールが緩和される前のメリットを受けていたのです。これはFASB157と呼ばれ、従来の資産だけではなく、負債も時価で評価する、というルールです。3月初めまでは金融危機は深刻化する一方でしたから、メガバンクの負債の評価はかなり下がっていたのです。資産の評価が下がると損失が出るのと逆で、負債の評価は下がると利益が出るのです。直感的に変だと感じられると思いますが、メガバンクは今回、正にその変な利益をかなり計上しているのです。好決算はこの変な利益が寄与した結果とも言えます。

バンクオブアメリカの決算は中国建設銀行株の売却に伴う一時的な利益が大きく貢献していたにも拘わらず、ルイスCEOは「会社自体の強さだ」と強調しました。これが逆に不誠実な印象を与え、株価は一日で24%の急落となりました。これに加え、特に1-3月期は巨額の公的資金注入を受けたAIGが大規模なクレジット・デフォルト・スワップの手仕舞いを行いました。自ずから取引相手の言い値での手仕舞いになったため、取引相手の大手金融機関に大きな利益(公的資金)が転がり込んだ可能性が高いと見られます。

出来るだけ財務内容を良く見せ、資本増強を有利に進めなければならない状況である事は分かります。しかし今の米金融機関は勉強する事よりも、成績表を良く見せる事に力を入れすぎているように見えます。それが行き過ぎて市場に「誠実でない」という印象を与えてしまうと、逆効果になる事が忘れられているような気がします。

(2009年4月21日記)

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2009年4月 2日 (木)

今回の反騰相場は「いつか見た光景」となるのか?

中原圭介氏のコラムから

今回の反騰相場は「いつか見た光景」となるのか?

先週までのNYダウ平均株価は3週連続で上昇し、今月に付けた最安値から約19%上昇して終わっています。3週連続の上昇は2008年5月以来のことです。アメリカ政府の景気対策に加え、FRBの資産担保証券への資金供給策、財務省の不良資産買取策と、矢継ぎ早にできる限りの政策が総動員された結果、市場の期待が膨れ上がり、景気底入れを見込んだ株価反騰となっています。

しかし、私は景気が底入れしたと判断するには早計だと思っています。

FRBの資産担保証券への資金供給策は、本来ならばそれなりの効果が期待できますが、現在は商業用不動産価格の下落幅が拡大傾向にある途中です。せっかく住宅価格の下落幅は縮小してきているのに、商業用不動産のローン延滞率はリーマンショック以来、直近の2月まで上昇基調にあります。商業用不動産価格の下落とともに、金融機関が保有する関連証券化商品の損失額が急拡大していることは間違いありません。FRBの負担がどこまで増えるのか、非常に不透明な状況です。

金融機関の不良資産買取策にしても、最大の焦点である不良資産の価格がどのように評価されるのかは、まだ何も決まっていません。おまけに、金融機関は不良資産を処理することにより確実に損失が膨らむため、簡単にはこの買取策の活用に踏み切ることができないでしょう。追加損失が膨らめば、資本注入に必要な金額も増えますし、政府の公的関与の度合いが強まります。制度の欠陥を補う妙案が出て来ない限り、金融機関の立場からはとても安心できるスキームではありません。

その上、買取枠が96兆円で本当に足りるのかという疑問もあります。以前、バッドバンク構想が一回立ち消えになりましたが、その原因は不良資産の処理には約400兆円が必要であるという試算が出たためです。そんなお金はとても捻出できないと、バッドバンク構想は頓挫していたのです。それを、新たに96兆円でやると言われても、その資金枠ではとても足りないと思われます。住宅市場や商業用不動産市場が回復しない限りは、やはり少なくてもあと数百兆円は必要であると考えられます。

私がこのブログでリスク資産のオールキャッシュ化を唱えて以来、アメリカの株価に連動して日経平均株価が予想以上に反騰する局面は2回ありました。昨年の4月~6月と10月~11月の2回の反騰相場です。ただし、今回の反騰相場と昨年の2回の反騰相場との違いは、明確にしておく必要があります。日経平均株価で見ると、昨年10月~11月の反騰相場前の安値と今年3月の安値がダブルボトムを形成したことで、景気後退の底打ちは確認できていないものの、相場のトレンドは底を打った可能性が出てきたということです。

もちろん、拙書「サブプライム後の新資産運用」でも書いているとおり、景気後退が続いている途中でのトレンド転換は当てにはなりませんが、昨年4月~5月のトレンド転換時の株価水準から一時は半値近くまで落ちているので、以前のトレンド転換よりは信用性が増していると言えます。

しかしながら景気後退下では、「期待で買われ、現実で売られる相場」が何度となく繰り返される傾向があります。2008年6月7日の記事で述べたように、「いつか見た光景」が再現される可能性は捨て切れません。

このように判断が難しい局面では、どちらに転んでも大丈夫なように、ニュートラルな思考に切り替えることが求められます。

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2009年4月 1日 (水)

官民投資プログラムの効果は?(2)

堀古氏のコラムから

官民投資プログラムの効果は?(2)

最近、アメリカでは金融危機への対応策として様々な策が発表されます。それもスピードがかなり早いので、日本にいらっしゃる方はなかなかついていけないのではないかと思います。ですので今一度、現在どの位置にいるのかを確認しておきたいと思います。

不良債権問題の解決に必要なのは大きく、(1)不良債権の価額を把握する事、(2)それに伴って発生する金融機関の資本不足を補う事、(3)金融機関の新規貸出し増加、です。アメリカは昨年後半にかけて不良債権問題の解決を急ぐあまり、(1)が中途半端なままに(2)に進んでしまいました。2-3月の株式相場急落はその反動が出たと言ってよいでしょう。そして先月、大手金融機関に対して、再び(1)をしっかりやろうという事になりました。これがガイトナー財務長官の発表した「ストレステスト」です。4月末までに完了する事になっています。

これとは別に、(2)から(3)への動きを進めようとするのが、今回発表された官民投資プログラム(PPIP)です。即ち、PPIPによってある程度資本不足が緩和されると同時に不良債権が切り離されるので、金融機関は新規貸し出しを進める事ができる、という訳です。しかし前号最後で申し上げたように、PPIPは一つの問題を解決しようとするために、将来他の大きな問題を孕んでしまった可能性が高いと考えています。

まず最近、金融危機対策を実施する主体として財務省とか連銀とかFDICとか、政府系の様々な主体が出てきます。難しく考える必要はありません。本質を掴むには全て「政府」と考えるのが一番です。(例えば「連銀が長期国債を購入」というニュースが出たとします。国債を発行するのは財務省ですが、財務省も連銀も「政府」と考えると国債はプラスマイナスゼロですので、結局このニュースは「連銀が紙幣を印刷してばら撒いた」と同じである事が分かります。)この考え方で今一度、このプログラムをご覧になってみて下さい。

1. 銀行が額面100億円の不良債権をオークションにかける
2. 民間のファンドが入札、仮に84億円で落札したとする
3. a. 落札金額の14分の1(6億円)を民間のファンドが出資
  b. 14分の1(6億円)を財務省が金融安定化資金から出資
  c. 7分の6(72億円)をFDIC(預金保険公社)がノンリコース融資(※)

財務省もFDICも政府です。なので84億円のうち78億円は政府がお金を出している事になります。しかも72億円はノンリコース融資なので、不良債権が値下がりして民間のファンドが返済不能になった場合、その値下がりに伴う損失は政府の負担です。即ち「官民投資プログラム」とは名ばかりで、14分の13のお金とリスクの負担をしているのは政府なのです。ちなみに最大1兆ドル規模のPPIPに対し、数多くの銀行破たんの結果FDICにはもう190億ドルしかお金が残っていないというのはご存知でしょうか?

そう言えば昨年8月、証券会社メリルリンチが「CDO(債務担保証券)を7200億円でファンドに売却」というニュースが出ましたが、実はメリルリンチは同時に、ファンドに対して5400億円のノンリコース融資を実施していたのを思い出します。5ヵ月後の今年1月、メリルリンチが巨額損失計上を発表したのはご存知の通りです。

今回例えて言えば、政府は保険を売ってその保険料を金融機関にプレゼントし、残った保険金支払のリスクだけ背負う状態になります。もちろん今後、不良債権の価値が上昇してくれれば問題はありません。しかし将来、丁半博打に負けて不良債権が値下がりする事になれば、金融安定化資金は簡単に枯渇してしまいます。その時政府は市場に、まだピストルの弾が残っているように見せかける事はできるのでしょうか?

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