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2009年1月14日 (水)

「100年に一度の経済危機」は間違い

中原圭介氏のコラムから

「100年に一度の経済危機」は間違い

グリーンスパンFRB前議長は、住宅バブル崩壊を振り返り、急成長を続ける新興国での貯蓄急増が世界中の長期金利を低下させ、それが住宅バブルの原因となったと説明しています。そして、こうして生まれたバブルを金融政策では抑えられないとも弁解しています。これは間違いだと思います。所得が少ない層への金融機関の乱脈融資、それに伴う住宅需要の急増が住宅バブルの大きな原因であるからです。金融政策の大きな過失が原因です。

資産バブルを抑え込むのは金融当局の責任です。しかしグリーンスパン、バーナンキ新旧両議長ともインフレを抑えることには責任を持ってきましたが、住宅バブルに対する責任は果たしてきませんでした。古くからある中央銀行のDNA、すなわち、「中央銀行の最大の使命はインフレを抑えることである」という考え方から抜け出せませんでした。本当に日本のバブル崩壊を研究していたのであれば、アメリカの金融当局は資産バブルにも注意を向けることができたはずです。

日本のバブル崩壊後の処理が長引いたのは、主に二つの原因があると考えられます。ひとつは地価の下落がなかなか止まらなかったこと、もうひとつは銀行が不良債権をバランスシートに含むのを許されたことです。

残念ながら、アメリカではこの教訓さえも生かされていません。欧米での金融危機の原因は、住宅価格の下落が止まらないこと、金融機関の不良債権の額が不透明であること、この二つです。後者の原因は、日本よりも先行きの見通しを難しくしています。

欧米の金融機関が不良債権を時価で評価することをせずに、処理を先延ばしする動きが続く限り、日本と同じあるいはそれ以上の失敗を繰り返すのは明白です。裏を返せば、時価で評価したら世界金融がクラッシュしかねないという事情があるのかもしれません。時価での評価をして不良資産の処理を急ぐにしても、時価での評価を先延ばしにして本来の不良資産を放置するにしても、どちらも厳しい選択肢となりそうです。

グリーンスパン前議長が「100年に一度の津波」と呼んだのが一人歩きして、現在進行形の経済危機は「100年に1度の危機」と騒がれていますが、それは間違いであると思います。グローバル経済のもとでは、経済のスピードが速まっていて、これまでの歴史と同じ時間軸で危機が起こるスパンを考えることは適当ではないからです。実際に日本の例と比較すると、欧米では昨年1年間だけでも、5年間分くらいの出来事が起こってしまったのです。

それにグリーンスパンのこの言葉には、自分の金融政策の誤りを認めたくないという気持ち、誰がやっても止められなかった危機であるという弁解の気持ちが含まれています。伝統的な金融政策に縛られ、金融工学を過信したことによる失敗を、この言葉で片付けてしまうのは良くはありません。10年後か20年後に、再び今回の教訓を生かすことができなくなってしまうからです。

今回の危機を乗り切るために、先進各国は財政赤字を膨らませるのを避けられません。それは、将来的に各国の国債の価値を不安定なものにするでしょう。特に、アメリカ国債の格付けが最上級のトリプルAを維持することが、いつ金融市場で疑念を持たれるようになってもおかしくありません。危機を乗り越えるための財政出動が、新たな危機の原因になろうとしています。

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